遠藤周作の読み直しに関して

 いわずと知れたカトリック作家である遠藤周作であるが、彼の作品を評するに当たり彼が小説家となる以前に影響を受けたと思われる吉満義彦の思想から彼の作品を読み直す必要があるのではないかと考える。なお、遠藤の作品はジョン・ヒックの影響などそれを好意的に評価するか否かは不問とするが宗教多元主義の色の濃いものであるとされている。このこと自体に対して私も遠藤の作品を読む限り感じることであるし否定するものではないが、それはあくまでも吉満に代表されるような伝統的なトマス哲学(直接には吉満を介してマリタンの新トマス主義)との格闘が出発点にあることがそれほど意識されていないように私には思われる。なお付言すると私は文学批評を好まないし、カトリック文学の論文に一つも目を通さずに発言しているため、すでに大正期からのカトリックの受容の視点からの文学批評があるのかも知れず、取るに足らない指摘である可能性のほうが高いであろう。