一冊でわかる心理学
心理学 ― PSYCHOLOGY (〈1冊でわかる〉シリーズ ― Very Short Introductions日本版)
- 作者: ギリアン・バトラー,フリーダ・マクマナス,山中康裕
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/06/06
- メディア: 単行本
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1 心理学とは何か どのように研究するのか
ウィリアム・ジェームズは、心理学を「精神生活の科学」と定義した。
彼は、人間の心理は決まった基本的要素から成り立っていると考えた。思考、感情、時空間の中に存在する物質世界、そしてそれらを認識する方法である。
私たち一人一人のにとってこの認識は、まずは個人的で私的なものとなっている。それは私たち自身の思考や感情、この世界での体験に基づいており、また、科学的事実にも影響を受けることがあったりなかったり、というものである。かくして、私たちは自分自身の経験を基準に、心理的なことがらについてたやすく判断を下すことができる。
心理学は、どの説明がもっとも正しいのかを決めたり、それぞれの説明があてはまるような環境を確定したりする方法を提供しようと試みているのである。心理学者の仕事は、私たちの、主観的でおそらく偏っていてあてにならない内側の情報と事実とを、つまり、私たちの偏見と科学的な意味において「真」であることとを区別するのに役立っている。
心理学は、ウィリアム・ジェームズの定義によると、こころと脳に関する学問である。
実のところ、脳を直接に研究することはほとんど不可能である。そこで心理学者は、私たちのこころの中でいったい何が起こっているのかについて、私たちの講堂を研究し、観察に基づいて仮説を導き出すことによって、多くのことを見いだしてきた。
心理学はまた、生命体(通常は人間)が自分たちの精神的能力やこころを使って周囲の世界にどのように影響を及ぼすかについて研究する学問であるといえる。
心理学研究に特有の困難さは、科学的な事実は客観的かつ証明可能なものであるべきなのに、こころの働きはエンジンの働きを観察するようには観察できないということにある。こころの働きは毎日の生活のなかで間接的にのみ知覚されうるものであり、観察可能なもの、すなわちその人の振る舞いから推論しなければならない。…つまり、使うことのできる手がかりを値踏みし、解釈し、すでにわかっていることを使って空白を埋めていくのである。さらにいえば、そういった手がかり自体も、注意深い観察から得られたものであり、正確な測定に基づいたものであり、できる限りの科学的厳密さをもって分析されたものであり、公に提示して精密な吟味にかけることができるような論理的で筋の通った論証を用いて解釈されたものでなければならない。・・・私たちが心理学に問うて知りたいと思っていることのほとんどは、間接的に測るしかないおとであり、こういった活動のすべては多様に決定されている。つまり、これらはひとつの要素だけではなく、いくつかの要素の影響を受けているのである。
心理学では複雑な相互作用は例外というよりむしろあたりまえのことである。そして、こうした相互作用の理解は、高度な技術や理論の発展にかかっている。心理学は他のどの科学とも共通した目標を持っている。すなわち、研究対象となる過程を記述し、理解し、予測し、それをどうやって制御あるいは調整するかを学ぶという目標である。