中世の人間像
自由と恩寵 十二世における人間観に関する一考察 K・リーゼンフーバー
十二世紀の文化は、人間の人格性とその尊厳を自覚することにより、目覚しく向上した。この自覚は、例えば宮廷・騎士文化や文学、都市における市民階級の旺盛な知識欲、大聖堂の堂々とした聖人像、膨大な教令集、などを生むに到り、また、神学的・哲学的著者においても、人間の自由の、本質・段階・使命を解明しようとする、という形で顕著に表れた。自由はここで、人間存在の自然な特徴として理性的に分析されると同時に、最も深いところでは、人間が神の似姿であるところから理解される。人間が神の似姿であることを、当時の思想家たちは、まず、人間が知恵と理性に恵まれ、それ故に神を認識出来るところに、また特に、人間の、喪失・制限不可能な自由意志に見いだしていた。「恐らく自由意志のみが欠如と減少を全く被っていないということは、自由意志には特に永遠にして不変な神性の実体的似姿が表れているからであると考えられる。」 pp71-72