文化としての近代科学

序章
1 はじめに

大昔から今日まで日々創り出されてきた、人間の知的営みとしての科学は、本書の題名どおり「文化としての近代科学」なのであり、「歴史的・学際的関連」の中で生み出されてきた「文化としての近代科学」なのである。読者とともに科学をこのようなものとして見直してみようとするのが本書の意図するところである。(p19)

近代科学の歴史的・学際的関連の見事な一例を見ることができる。年代的には、キリストの降誕、つまり紀元元年か前後から今日にまでわたる問題である。そして、それが関連する分野は、宗教、とくにユダヤ教キリスト教、『聖書』、教会史、美術、天文、科学、現代科学技術、国際関係、現代ジャーナリズムと、きわめて学際的である。(pp24-25)

本書の内容はどのように展開するのかといえば、「歴史的関連」を縦糸に、「学際的関連」を横糸にという仕方で、「文化としての近代科学」というものを織り上げてみようとするのである。縦糸に当たる「歴史的関連」としては近代科学の誕生とその後の発展を取り上げるわけで、その各歴史的段階においてさまざまの「学際的関連」というべきものがあるから、それらを横糸として取り上げていく。これが本書の基本的構成となるのである。(pp25-26)