経験と教育

経験と教育 (講談社学術文庫)

経験と教育 (講談社学術文庫)

すべての社会運動には、知的な対立する論争がつきものである。教育のような社会的に重要な関心事が、実践的にも理論的にも論争の舞台にあがらないようでは、それは教育にとって健全な兆しにはならない。しかし、理論にとって、すくなくとも教育哲学を形成する理論にとっては、実践上の対立やその対立レベルでおこなわれる論争だけでは、ただ問題を投げかけているにすぎないことになる。そうした対立が起こる原因を先ず突き止めなければならない。(p7)
論争する両派の実践と理念を象徴する主義主張よりも、はるかに奥深く、また一段と包括的な次元から生じる教育の実施上の作業計画を提示することこそ、教育理論を知的に構成するために科せられた役割なのである。(p7)
教育哲学の役割を定式化することが緊要な課題になってくる。この定式化は、教育実践の新しい様式を導き出すような、新しく秩序立てられた概念を導入することが必要不可欠であることを意味する。このような理由によって、伝統や習慣を見離すようなことがあれば即刻、教育哲学を発展させることは、はなはだ困難なことになる。(p8)
それゆえ、思想や活動についての新しい体制によって指導されたあらゆる運動は、遅かれ早かれ、過去にみられたように、簡潔で、また一段と根本的な思想や実践を表現するものへと回帰するよう、呼びかけているのである。そのことは、古代ギリシアや中世の諸原理を、現時の教育において復活させようとする試みに例証されているのと同じである。(pp8-9)
教育については、なんらかの主義という見地からではなく、「教育」それ自体の側面から再考しなければならない (p9)