神学研究の必要に関して

[序]神学をそもそもどのように捉えるか

 神学研究の必要について考察する前におこなわなければならないのが、そもそもここで述べ、また考察の対象としようとしている神学が如何なるものであるのか?この問いに答えることが困難にしても、少なくてもここで筆者である私が如何に捉えるのかが明示されなければならない。
 神学、つまり学と呼ぶからには学問である。故に神学は大学の一学科として世界で、現に日本においても大学で教授されている。神学は基本的には各教派の(この場合、キリスト教諸派に限らず仏教、神道含む)大学においておこなわれる。この場合、大学は公立の大学ではなくあくまで私立の大学において教授される。なぜなら、公立の大学においてある宗派の宗教教育を行うことは政教の分離に反する恐れがあるからである。この点は非常に重要である。日本においての大学の始まり、それは取りも直さず帝国大学であり、その起こりは現在の東京大学である。官立の大学としての東京大学の特徴は工学部を当初より有しているが、欧米の諸大学が有する神学部(科)を有していなかった点である。
 しかしながら、これらの官立の大学においても地域研究、哲学(主に古典学)また宗教社会学や宗教学の見地から様々な研究がなされている。これらの研究また学問と神学の違いはなんであろうか?一部の大学においては神学からキリスト教文化研究とその重点を移す動きがある。これはただ扱う領域を広げるだけなのか?それとも種々の異なった方法や前提をもった学問を対象の同一性故に同じ学科・学部内で異なった観点からの知見として教授するものなのか?はたまた、学生数の減少ゆえの経営的な努力ゆえなのか?
 ここで問題をわかりやすくするため整理をしたい。神学を考えるに当たって考えなければならない点は以下の4点である。

  1. 神学(特にキリスト教各派の神学、さらにはカトリックの神学)の対象は何であるのか、また前提は何であるのか、また方法は一体どのようなものであるのか?
  2. 宗教学を初めとして他の学問領域と方法、対象、前提において共通点は何であるか、また相違点はなんであるか
  3. 現在日本の大学でどのような形で神学またキリスト教が教授されているか
  4. 他の宗教の神学または宗教研究(その宗派自身のこの場合、教義解釈、研究と呼ぶべきかもしれない)はどのように大学で教授されているのか

今回は関東圏の大学を中心に取り扱うこととする。今回対象とする大学は所謂universityつまり総合大学であり、宗派教育また司牧者養成を主とする神学校などは除くものとする。各大学においては学科(つまり宗教ないしは神学)が存在しなくとも建学その他の精神においてそれぞれの宗教性が重要であることは十分考慮するが今回は総合大学の各学部・学科と並置され教授される学問としての神学を問題としたいと思う。故に各大学に設置された学部・学科を問題とする。

[1.1]日本においての宗教

 
 あまりに漠然とした項となるが神学を考えるに当たり以下のように宗教諸派を分類したいと思う。

 上記以外にもユダヤ教イスラム教など様々な宗教、宗派が存在するとは思うが、上記四つのカテゴリーでほぼ日本の宗教教育、宗教に関しては分類、取扱いが可能だと考える。