憲法

一 生存権
1 憲法二五条 
 憲法二五条一項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定める。この生存権の保障は、社会権の中で原則的な規定であり、国民が誰でも、人間的な生活を送ることができることを権利として宣言したものである。
 この第一項の趣旨を実現するため、第二項は、先に引用したように、国に生存権の具体化について努力する義務を課している。
 それを受けて、生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法なだの各種の社会福祉立法、国民健康保険法、国民年金法、雇用保険法、老人保健法、介護保険法などの各種の社会保健立法等の社会福祉制度が設けられ、また、保険所法〔現行は地域保健法〕、食品衛生法、環境基本法大気汚染防止法など公衆衛生のための制度の整備も図られている。

2 生存権の法的性格

  1. 生存権は…国の積極的な配慮を求める権利であるが、「具体的な請求権」ではない。そのため、二五条は、国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を国に課したにとどまり、個々の国民に対して具体的権利を保障したものではない、と説かれることが多い。この見解を一般にプログラム規定説と言う。

 生存権は、それを具体化する法律によってはじめて具体的な権利となる、と考えざるをえない。
 二五条の生存権生活保護法のような施工立法によって具体化されている場合には、憲法生活保護法とを一体として捉え、生存権の具体的権利性を論ずることも許されるであろう。