ミッション・スクールとは何か 教会と学校の間

ミッション・スクールとは何か―教会と学校の間

ミッション・スクールとは何か―教会と学校の間

「ミッション・スクール」は、「スクール」として日本の教育体系・行政に組み込まれている。したがって、もし教育機関としてのみ論じ尽くせるならば、一般の私立学校と同列に置き、殊更「ミッション・スクール」として主題化する必要はない。しかし、宗教教育という宗教的活動の実践の場としても一定の機能を果たしている―少なくとも、部分的に果たそうとしている―という事実は、「ミッション・スクール」固有の問題領域が存在することを示唆しているのではないのか。この問題の固有性とそれを論ずべき必然性が、意識的にか無意識的にか無視されてきたということが、「ミッション・スクール」をめぐる最初の、もしかすれば最終的には最大の問題なのであろう。p22

宗教学校に関して、信仰を前提としない客観的立場からの研究が長い間等閑視されてきた原因はどこにあるのか。まず最初に挙げられるのは、戦後のかなり長い期間、日本の論壇で大きな力を振るった近代主義的思想の影響を受けて―もっとも、近年、明らかに思潮の方向は反転してきたが、―教育界にも版宗教的あるいは非宗教的風潮が根深く浸透していたという戦後思想の来歴である。これは、「宗教対科学」という安直な啓蒙史観の対立図式を下地に、戦前・戦中の宗教の国家的統制に対する反動として宗教忌避の傾向が加わったからであろう。
 第二には、このテーマが社会学や教育学や宗教学などの複数の分野にまたがる学際的性格を帯びており、方法論的な正統性・嫡出性を尊ぶ日本のアカデミズムの仕来りにはそぐわなかった、という事情が考えられる。p22