文献目録に関して

  • はじめに

大正期から1950年以前までの文献目録を作成いたします。著者・訳者氏名を除き、旧仮名、旧字は適宜変更いたします。また、個人経歴についてはできる範囲で註として記します。また、興味のある文献がありましたら、コメント欄などでご連絡ください。

  • 文献目録の作成の目的と狙い

大正期からの論集「カトリック(後に「カトリック思想」に改題)」の目的は日本の文化人、知識人にカトリックの思想を啓蒙するものであった。残念ながら現在この目的をもつ論壇誌は存在しない。戦後特に1950s以降、上智大学の規模も拡大し、神学部も開設されるなど組織の面において十分な準備が整ったが故に、カトリシズムの論壇誌の必要性が減じたと見ることができるのかもしれない。しかしながら、神学部の設置に伴い公刊された論文集はあくまで学術研究に重きを置くものであり、一般の読者、特に読書人、つまりは知識人、教養人へのカトリシズムの浸透を目指すものではなかった。そして、昨今の論文を読むかぎりその傾向はさらに強くなっている。
戦後、上智大学から論集「ソフィア」が刊行された。50s、60sの論考を俯瞰するかぎり、この公刊物がカトリシズム、と言うよりむしろキリスト教ヒューマニズムと控え目に呼ぶべきものの普及を目的としたものとみることができる。であるが、この公刊物も現在では論考の程度も低く、シンポジューム(しかも内輪の!)のレビューにすぎない。この公刊物も外部の読書人に読まれることを前提としてのものでなくなってしまった以上、現在“カトリシズム”を一般に訴える論壇は存在しないと結論づけてかまわないと考える。
そして、この大正期からの目的、つまり「カトリック思想、カトリシズムに市民権を得させること」が今現在果されているか、と問うた時、是と答える人がどれだけいるだろうか。現状はまったく逆である。そうであるのになぜその目的をもった論壇がないのであろうか。上智大学に課せられた本来の使命、つまり学術研究により知的な方面においてカトリックの立場に立ち貢献することが果されているのかと問うことにもつながる。無論、アカデミックな方向で多くの貢献をしていることは疑いようがないし、私が問題にしたいのはその点ではない。日本は大学外にも非常に知的で賢明な読者が多数いることが忘れられているのではないかと、問いたいのです。神学や宗教学その他専門のために読む読者にではなく、一般の読者へ向けて書く人、そして書かれたものがあるべきではないのか、そのように問いたいのです。
そのためにまずやるべきは、過去の論考を整理することであると考えました。地味でかつ面倒な作業ですが、この作業はこれだけでも実り豊かなものになると信じています。
また、一般向けのカトリシズム論壇誌の基礎となることを願って。

追記;「カトリック思想」は一時廃刊の後、エンデルレ書店から「世紀」と改題して発刊される。1994年に廃刊。